自由対流圏内を運ばれるエアロゾル金属成分の富士山頂における動態観測

Observation of metallic species in aerosols transported in the free troposphere and arriving at the summit of Mt. Fuji

 

畠山史郎 

 Shiro HATAKEYAMA

研究の概要

富士山測候所において、大陸から自由対流圏を経由して輸送されてくる大気汚染物質の内の微細な粒子状物質の観測を行い、自由対流圏内の輸送の特徴を抽出する。粒子状物質の中でも特に健康への影響が大きいとされる微小粒子の寄与を調べるため、粒径別(10μm以上, 10μm>粒子径>2.5μm, 2.5μm>粒子径>1, 1μm粒子径>0.5μm)に粒子を捕捉できるサンプラーを用いて粒子のサイズによる化学成分の違いを調べ、発生源の推定にも用いる。 大きい粒子には主に海塩や黄砂などの土壌由来の成分が含まれ、微小な粒子には硫酸塩や硝酸塩のような人為起源の成分が含まれと予想される。2.5um以下の粒子(いわゆるPM2.5)は呼吸により肺の奥まで入ってしまうので、鼻やのどで止まる大きな粒子とは健康に与える影響が異なる。

(英文表記)
Fine particles transported in the free troposphere from East Asia will be observed at the summit of Mt. Fuji to elucidate the characteristics of the transport in the free troposphere. (1)Aerosol particles will be collected continuously by use of a high volume tape sampler. Chemical analyses of aerosols collected in day time and nighttime will be compared. (2)Size segligated collection of particles (PM10, PM2.5, PM1, PM0.5) will be carried out by use of a nano-sampler and chemical analyses of aerosols of each size range will be done.

 

研究目的
東アジア地域の急速な経済発展に伴い、この地域から排出される大気汚染物質もまた急速に増大し、西風に乗って我が国や太平洋、さらには北米にまで輸送される大気汚染物資の影響は非常に大きなものとなっている。このような長距離輸送の途上における大気汚染物質の性状については、自由対流圏と呼ばれる1500m程度以上の高度での測定が重要である。
本活動は、このように急速な発展を遂げている東アジア地域からの大気汚染物質、特にその中の微小粒子状物質の動態を、自由対流圏に突きだしたタワーとも言える富士山の山頂で測定しようとするものである。 

 

内外の関連研究の中での位置づけ
長距離越境大気汚染は重要な環境問題となっており、特に最近の中国国内における高濃度エアロゾル汚染とも関連して、大陸から輸送されるエアロゾルの化学成分の測定は興味が持たれる。 

 

期待される成果
山頂で捉えられたエアロゾルの金属成分の分析から、土壌起源元素、化石燃料燃焼起源元素、海塩等に分類し、その濃度分布によって発生源を推定する。さらにPMF(Positive Matrix Factorization)やTPSCF(Total Potential Source Contribution Function)などの統計的な解析を行うことにより、発生源の推定を確実なものにすることができる。このようなエアロゾルは主に東アジア、特に経済発展著しい中国に由来するものではないかと一般市民の感覚からも考えられてはいるが、それを科学的に裏付けるための重要なデータが取得できるものと期待される。 

 

社会への還元
一度は廃止されることが決定していた旧富士山測候所は、大気化学や高所医学、天文学・宇宙科学、自身火山学、極地生態学、スポーツトレーニング学、雷・大気電気学など広い分野での活用が可能であり、またそのような活動が期待されるが、一般の理解が進んでいないため、十分な利用結集がなされていない。ここでの活動を行い、社会に宣伝することによって旧富士山測候所の有効性を一般に知らしめ、利用を結集することによってさらにその重要性を高めていくことができる。