富士山頂における長期二酸化炭素濃度観測

Study on long-term CO2 observation at summit of Mt. Fuji

 

向井人史 

Hitoshi Mukai
独立行政法人 国立環境研究所 地球環境研究センター
National Institute for Environmental Studies (NIES), Center of Global Environmental Research (CGER)

 

共同研究者
野尻幸宏・寺尾有希夫・野村渉平

(独) 国立環境研究所 地球環境研究センター

研究の概要
富士山の位置は、アジアの東にあり、その山頂は、自由対流圏に位置しているため、山頂での大気中の二酸化炭素濃度計測は、アジアのバックグラウンド濃度を捉えられると考えらえる。現在、国立環境研究所は、富士山頂にて、2009年より本研究所が開発した自立電源型自動二酸化炭素濃度測定システムを用い、大気中二酸化炭素濃度の通年観測を行っている。また夏期の間のみ、連続計による計測も行っている。
本研究では、山頂における二酸化炭素濃度計測を継続すると同時に、長期的に観測を継続させることを目的に、雷対策やメンテナンスの省力化を行う。また得られた観測結果の解析を行う。

(英文表記)
Long term atmospheric CO2 concentration measurement on the top of Mt. Fuji (3776M) has started by an automatic CO2 measurement system developed by NIES (National Institute for Environmental Studies) since August 2009. We have started the year-round measurement for the first time since the Mt. Fuji observatory was closed to be an unmanned station in 2004.
We continue the measurement and analysis of CO2 concentration on top of Mt. Fuji and keep improving the long term measurement system.

研究目的
地球温暖化研究の基礎となる大気中温室効果ガスの濃度観測により二酸化炭素濃度の変動を捉え、地域・世界規模での炭素循環を把握することを目的とした研究の一環として、日本列島の中央に位置し、自由対流圏に突き出た富士山頂にて二酸化炭素の長期観測を行うことで、日本上空、そしてアジア域の二酸化炭素濃度の変動と炭素循環の解明を進めることを目的としている。
また、観測環境の厳しい遠隔地での自動二酸化炭素濃度測定システムの開発を行い、他の同様の環境への利用を可能にできるようなシステムを作り上げることを目的としている。


内外の関連研究の中での位置づけ
ハワイのマウナロア観測所で米国気象庁と始めた共同研究(同時フラスコサンプリングデータ比較)を受けて、自由対流圏に突き出た高所での観測という類似点がある一方、大陸に近く日本の中心に位置し人間活動の影響を少なからず反映する富士山と、太平洋の真ん中でバックグランド大気のデータを観測し続けるマウナロアでデータ比較を行い、それぞれのデータの類似点と相違点を用いて炭素循環の解釈に役立てる。


期待される成果
(ア)富士山頂の大気中二酸化炭素濃度観測の延長
(現在、3年間の観測結果あり、4年間の観測結果の蓄積ができるか?)
(イ)山岳地点(例えばMt. Mauna LoaやMt.Waliguan)で観測された結果と、比較できるデータ数の増加、それによる炭素循環解析の精度向上
(ウ)富士山頂における無人二酸化炭素濃度観測の稼働可能期間の延長
(現在、3年間不具合なし、4年間継続できるか?)


社会への還元
富士山頂の大気中二酸化炭素濃度の通年観測は、日本上空における二酸化炭素濃度の変化を捉えることができる。他のステーションで観測されるデータと総合して、日本近傍の温暖化傾向を捉え、炭素循環をさらに明らかにする一助となるであろう。具体的には、観測地点が増えることでインバースモデル解析(観測結果から地域別の二酸化炭素吸収・排出量を算出する)の精度向上に貢献できる。
また、認知度の高い富士山の、山頂の二酸化炭素濃度変動は、一般の人たちに、現在の温室効果ガスの濃度増加に関心を高める一助になると思われる。