「理科準備室へようこそ」~富士山頂での教材開発 II ~

古田 豊
Yutaka FURUTA
学校法人立教学院 立教新座中学校・高等学校
Rikkyo Niiza Junior & Senior High School

共同研究者
綾部俊二 学校法人立教学院 立教新座中学校・高等学校
齊藤太郎 学校法人立教学院 立教新座中学校・高等学校
島野誠大 学校法人十文字学園 十文字中学・高等学校
林 壮一 学校法人立教学院 立教新座中学校・高等学校
渡部智博 学校法人立教学院 立教新座中学校・高等学校

活用の概要

富士山頂を理科教育の場として活用する。富士山頂で生起する自然を観察し、そのふるまいを探る理科実験を工夫し、学校で行う実験と比較して学ぶ教材づくりを行う。また変化する自然と向き合い、現象の空間的・時間的スケール感を伴った教材作成等に取り組む。富士山頂で出合う自然は、学校の人工環境のもとで行 う観察や実験を通じて養われる自然認識の範囲を拡げ、多様に移りゆく姿を伝えることができる。教育現場に実装する事例づくりを行い、様々な教育活動を行う際の諸要素を探る。


実施目的
日本国内最高地点で自然の営みを学ぶ教材を作り、青少年の学びに実装する事例を出す。
富士山測候所という学校にはない条件のもとで理科の実験を行い、学校の実験環境のもとで行う実験と比較して自然を学ぶ教材づくりを行う。教員が学校の理科準備室で日々行っている実験教材の検討を富士山測候所でも行い、学校だけで行う実験では得られにくい学びの要素を見いだす。複数の理科教員が協力して準備し、富士山頂と学校等を通信回線で結び意見を出し合い、中等教育の現場で展開できる教材づくりに繋げる。また、富士山頂で生起する様々な自然現象を観察し、描写し、現象に応じて理科実験を工夫し、記録し、活用する事例を増やす。
 理科以外の教科教育、環境教育及び防災教育、家庭教育に繋げ得る体験、観察、実践等の要素を探る。
 かつて人間は、最高峰に挑み、極地に挑み、宇宙に挑み、深海に挑み、自然の未知の姿に近づき探り、科学と教育上の展開を創造してきた。富士山頂もまた訪れて学べる場所であり、その内容と方法を探りたい。

期待される成果
平成24 (2012) 年に単独で実施した実験方法を改良し、より簡便な、またより定量的な実験データを取ることができるよう工夫した実験事例が提出される。また富士山頂滞在7泊中に経験した天候はほぼ晴天であったが、本計画でそれとは異なる気象条件に恵まれた場合、その自然環境に応じた実験が工夫される可能性を有する。
平成25(2013)年度の活用計画は、理科教員の連携によって行われ、実験のアイデアが増え、より多様な教材が作られ、教育現場への実装事例も増えると期待される。
家族登山中に、山の自然に触れることができる簡易な手づくり実験例が工夫され、また富士山測候所での生活条件を体験・観察し、環境教育・防災教育に繋げ得る要素が検討される。

富士山測候所を使うことのメリット
1. 自然のあるがままの振る舞いから学ぶ。
 自然を理解する理科教育において、富士山頂では学校では得られない自然の振る舞いを観察でき、振る舞いに伴い生じる境界条件のもとで理科実験教材を作ることができる。富士山測候所に実験機材を運び込むことができ、身の安全、実験スペース、電源、時間等が確保され、富士山頂の「理科準備室」として活用できる。
2. 富士山頂で取得した実験データを比較対照例として教材を作ることができる。
 日本国内のどの学校にもない実験環境のもとで教材となり得る理科実験・観察・測定ができ、教員が各学校で用いている教材と比較して自然の振る舞いを学べる教材づくりができる。高度、風雨、紫外線、放射線などの条件を活かした実験が考えられる。
3. 教員が現地を訪れやすく、滞在日数を確保しやすい。
 極限環境を活かした教材づくりをする上で、例えば南極の昭和基地や国際宇宙ステーションで理科教育に繋げる実験を提案する場合と比べて、教員自らが体験しやすい。
4. 教材づくりと下見を通じて、教育利用を進めることができる。
 高地における身体への負荷、自然描写の様々な方法など、保健・国語・芸術など理科以外の教科の教材づくりに繋げる可能性を探ることができ、初等・中等教育の教員が富士山測候所を活用するノウハウを蓄積できる。また教員が富士山測候所に滞在経験をもつことで、教材づくりと共に青少年を引率する際の下見にもなり、教育利用の可能性を広げることができる。
5. 自然と実験を繋げるハンズオン活動ができる。
 富士山測候所を「理科実験室」として実験教室等の開催を検討でき、また遠隔授業の可能性を検討できる。
6.  環境教育・防災教育・家庭教育等に繋げ得る要素を探ることができる。
 富士山測候所でのし尿処理、水の使用等の生活上の工夫を体験・観察し、環境教育・防災教育に繋げ得る教材を探ることができる。家族登山中にできる簡易な実験を工夫し、自然の楽しみ方を紹介する事例を探ることができる。